予期せぬことも考えて
近年会社で扱う「ロングステイ業務」の中で特筆すべき新しい業務が発生しています。弊社の業務内容が語学関連や不動産、旅行業等でなく、法律業務、滞在ビザ、コンサルティング業務が中心のため、ここ近年、当初50代後半から60代でロングステイを始められたお客様の加齢、高齢化も日々進んでいて、頻繁に難解な問題の相談業務や手続依頼が相次ぐようになってきました。
①相続手続依頼
タイは不動産、動産、銀行預金等の資産の名義変更や売却に際し、裁判所の遺産管理人決定判決命令書が必要です。弁護士が諸々の書類を作成するための準備書類で日本の戸籍関係書類の翻訳や当地日本大使館の証明、タイ国外務省の認証等が必要となります。残された遺族の中にはこれら遺産の存在を知らない方も多く、進捗に時間がかかり、困難を招く原因にもなります。生前にこういう話はしたくないかもしれませんが、親族に説明しておくことも海外にロングステイする当事者として自覚しておくべきでしょう。
一例として「オヤジが10年程前タイの銀行に数千万を送金したらしいが、その口座を探してくれませんか?」というもの。なんとか銀行とのコネクションで探し出し手続を完了しましたが、気分は探偵でした。
②遺族年金の問題
近年の国際化を反映してタイ人と国際結婚しているロングステイヤーも非常に多くなりました。遺族年金受給手続等の案件は当地の日本大使館では手続をしてもらえないため、大使館に相談に行かれると、弊社を紹介されてくるタイ人の配偶者の方も多いです。
日本年金機構や各種共済組合への申請や書類作成は日本語で分かりにくく、タイ人遺族では困る人も多いです。最近はタイ人の配偶者と万が一に備え、事前に依頼に来社される方も多く、こちらも当初想定しなかった業務です。
③日本への搬送等の問題
ご自身の身体が自力では完全に動けなくなり介助が必要となった場合や、病気が悪化してどうにもならなくなる前にどうするか決めて、日本の親族や当地の関係者に相談して段取りを話し合っておく準備をしておきましょう。
タイの場合は、私立病院は株式会社で高度医療や有名病院の場合、医療スタッフは欧米や日本への留学組も多く信頼は高いものの、保険がない場合は大変高額な請求になるケースも多いです。
タイでも日本ほどではないにせよ、国保や社会保険制度はあるものの、国保はタイ人限定、社会保険は外国人の場合、会社員に限られます。
重態時の航空機によるストレッチャー搬送の場合は数百万単位の費用が掛かる場合もあり、手続も大変です。こういう場合は、即時日本到着後の住民票作成、国保加入、無職、無収入での保険料、医療費免除、高額療養費の事前免除申請制度もありますので、事前に自治体に相談してみるのもおすすめです。
いろいろなケースに対応できるよう、海外ロングステイの危機自己管理を今日から始めてみませんか?
(バンコクサロン②・佐藤 裕)