国立歌劇場のバルこそ、最高の舞台
ダンスはたしなみの一つ
男女の出会いの場は万国共通。男と女がいるところはすべてが、出会いの場と言っていいでしょう。でも、中世を今に残すウィーン独特の男女の出会いの場と言えば、なんといっても舞踏会、ドイツ語でバル(Ball)です。舞踏会はかつて、ヨーロッパ各国で盛んに開催され
ていました。ところが時代とともに、近年ではかなり縮小ムードにあります。そんななかで、栄華を極めたハプスブルグ家という宮廷文化のなかに未だ生きているウィーン子たちには、伝統の舞踏会が脈々と受け継がれているのです。ウィーンの子女は、15歳ぐらいになるとダンススクールに通い始め、ウィンナワルツのステップから上級まで習得します。ダンスは若いうちに身につけておくべきたしなみのひとつなのです。なぜなら、舞踏会こそ、男女の出会いには最高の場だから。全世界的に財政危機、経済危機が叫ばれるなか、ここウィーンではまるで別世界、舞踏会の参加者が年々増えているのですから…。
だれもが気軽に参加できるバル
舞踏会を主催するのは、さまざまな職種団体で、たとえば、菓子組合、医師会、弁護士会、パン業界、教育関係、消防関係などそれぞれの業界が趣向をこらした演出をします。また参加費用も比較的安く設定されており、服装にもあまりこだわらないパーティーも多いため、個人のふところ具合に応じて、だれでも気軽に参加できるシステムが、定着しています。
バルのシーズンは11月中旬から翌年3月までの長くて寒い冬の間が主ですが、この間、連日のように大小の舞踏会が年間450回開催されています。ピーク時には1日20会場を数えるほど。ひょっとしたら、掛け持ちでパートナー探しができるかも?
今では外国からも大勢の人々が参集するようになっています。男女がなんのためらいもなく、当然のように「手を握り」、「身を寄せ合い」、「ワルツにのって踊る」。この3拍子が揃ったらパートナーなんかすぐに見つかりそう。絶対に逃すことはできません!!!!!
数あるバルのなかでも、良家の子女が集う国立歌劇場(オペラ座)の舞踏会は、舞踏会のなかの舞踏会、バルのなかのバル、特筆すべき舞踏会です。世界で活躍中の著名人たちが集まることでも有名で、白いイブニングドレスに包まれた若々しいデビュタントたちの華やかなこと。
18歳になってようやく社交界デビューを果たした彼女たちは、燕尾服の紳士たちと一晩中軽やかに踊り明かすのです。ああ、なんと夢みたいな本当の話。
(オーストリア・ウィーンサロン Ipp常子)