北海道の自治体が管理運営に関わる「ちょっと暮らし」施設でのロングステイについて言及する。滞在施設はロングステイの重要なポイントである。
「ちょっと暮らし」施設については、一般社団法人北海道移住促進協議会(2005年9月設立)が発行する「北海道で暮らそう ガイドブック」に記載されている。同協議会の設立は、首都圏等の団塊の世代を主な対象にした移住の促進や移住ビジネスの創出を踏まえている。目的は北海道全体の振興を図ることである。この目的に賛同する道内の多くの自治体が加盟し、生活体験のできる「ちょっと暮らし」施設の情報を、移住に関心のある人へ提供している。
ガイドブックに記載された各自治体の「ちょっと暮らし」施設には、移住希望者を対象にした「限定」「優先」、当該自治体へ「関心」がある人、 などと利用条件が明記されている。この利用条件は、自治体により多少対応が異なり、「ちょっと暮らし」施設がロングステイ(シーズンステイ)に利用されてきた経緯がある。
筆者は、「ちょっと暮らし」施設の利用について、以前から関心があった。今夏、北海道くるま旅をする中で、釧路、紋別、上士幌の3自治体の「ちょっと暮らし」施設のワンストップ窓口の担当者から情報を収集した。(2022年8月)
釧路市(約16.8万人)は、「関心」の表記があり、長期滞在を歓迎している自治体である。道内では長期滞在者が一番多く、リピーターがいる自治体である。不動産会社のマンスリー物件が受け皿となっている。ホテルを利用した旅行会社の滞在型ツアーに参加する人もいる。市役所内に長期滞在ビジネス研究会の事務局があり、市職員が長期滞在者に情報提供をしている。これから月単位の長期滞在を考えたい人にとっては、インフラが整っていて、余暇時間をいろいろな活動で過ごせる釧路市は選択肢のひとつである。車を持ち込むと行動範囲は広がる。(参考:拙稿「釧路市の長期滞在に関する一考察」)
紋別市(約2.2万人)も「関心」の表記がある自治体である。移住希望者や仕事探しの入居者を優先し、空きがあれば、初めての人を考慮するそうだ。「ちょっと暮らし」施設として、教員住宅の空き屋や民間アパートの計10物件を当てている。現在(2022.8時点)、入居前にPCR検査による陰性証明書の取得が求められている。利用期間は2週間から3ヶ月までである。基本的な生活用品は完備されて、賃貸経費はリーズナブルである。涼を求めたシニアの長期滞在者がいることを確認した。当地には空港があり、羽田-紋別便が一日一便ある。パークゴルフ場(無料)や釣り場がある。冬の流氷シーズンに滞在すれば、貴重な体験ができそうだ。流氷船ガリンコ号への乗船、海の見えるスキー場も魅力の一つである。滞在生活には車が必要である。
帯広の北に位置する上士幌町(人口約5000人)は、「ちょっと暮らし」施設の利用条件は、移住希望者「優先」である。人口減少が進む道内の自治体が多い中、若い世代の転入者の増加がみられる自治体である。「ちょっと暮らし」施設の部屋数は増加され10部屋になるそうだ。問い合わせ先は、町の委託を受けたNPO法人である。移住を考える人には、季節を変えて2回まで可能である。当自治体の場合、単なる避暑目的のロングステイの施設としての利用には向かないと思われる。
北海道を回りながら、いろいろなロングステイスタイルがあることを実感した。「ちょっと暮らし」施設での体験を通して長期滞在のリピーターになった人、お気に入りの自治体で中古住宅を購入して移住に近い二地域居住をする人、雪の降らない地域の夫妻がある町でアパートを借りて越冬生活をしたという話‥‥。
「ちょっと暮らし」施設の利用を考えたい方は、最新版の「北海道で暮らそう ガイドブック」を入手し利用条件を確認の上、関心のある自治体のワンストップ窓口に連絡をして利用の詳細を理解することが重要である。
(登録ロングステイアドバイザー 黒田明雄)